iPhone 7の色域とカラーマネジメントが斬新すぎる

あまり知られていませんが、iPhone 7はカラープロファイルを使ってカラーマネジメントする世界初のスマートフォンです。2016年9月のKeynoteスピーチでPhil Schillerも広色域(Wide color gamut)に対応したカメラに触れていました。しかし新しい技術には弊害もあり、iPhone 7の写真をブログなどに使っている人は注意が必要です。





カラープロファイルとは?

カラープロファイルとは正式にはICCプロファイルと呼ばれ、International Color Consortiumが開発しています。(ちなみに職業柄ICCの中の人たちをよく知ってます)

色彩を扱うデバイスはディスプレイやプリンターやカメラなどたくさんあって、デバイス間で色情報を上手く伝え合う(カラーマネジメントする)必要があります。例えばRGB値が(255, 50, 50)だとこんな色になりますが、この色をプリンターで印刷したいなら対応したCMYK値が必要です。さらに、モニターによってこの色は違ったようにレンダリングされます。ThinkPadで見ている(255, 50, 50)とiPhoneで見ている(255, 50, 50)は違う色、もっと正確に言えば違う測色値なのです。カラープロファイルはこのようなデバイス間のコミュニケーションに使われます。カラーマネジメントの流れは以下のような感じ。

画像の色空間
sRGB, Adobe RGB
接続色空間
XYZ, CIELAB
出力先の色空間
sRGB, CMYK, etc

OSやアプリケーションが画像に埋め込まれたプロファイルを読み、接続色空間に変換し、ディスプレイのプロファイルに指定された色空間に変換します。

iPhone 7のカラーマネジメントの仕組み

iPhone 7のカメラで撮った画像にはDisplay P3のプロファイルが埋め込まれています。これをiosが読み取り、接続色空間に変換、最後に出力先(ディスプレイ)の色空間(同じくDisplay P3)に変換されて色再現が完了します。ほとんどのスマホは計算処理を少なくするためにそもそも画像に埋め込まれているICCプロファイルを読まずに、sRGBだと仮定して色処理を行なっています。自分が知っている限りICCプロファイルを読むスマホはiPhone 7だけです。

*2017年12月現在では多くのスマホがICCプロファイルを読むようになっています。

カラーマネジメントをチェックする

下にある3つの画像でブラウザーやスマホやアプリがカラーマネジメントを行なっているかどうかが分かります。中央の画像(オリジナル)はめちゃくちゃなカラープロファイルで色がめちゃくちゃにされています。左の画像(sRGB変換)が中央の画像からPhotoshopでプロファイルをsRGBに変換したもの。どのデバイスで見ても普通の女性の顔に見えているはずです。右の画像(プロファイルなし)はPhotoshopでプロファイルを捨てたもの。どのデバイスで見ても女性の顔が紫色になっています。

中央が紫色ならカラーマネジメントなし

もし中央の画像(オリジナル)が左と同じく普通に見えるなら、カラーマネジメントが行われている証拠です。逆に紫色に見えるならカラーマネジメントは行われていません。試しにこの記事をパソコンで見たりスマホで見たり、また色々なブラウザで見てください。

ところで、正確なカラーマネジメントにはデバイス(パソコン、タブレット、スマホ)とアプリやブラウザーのすべてがカラーマネジメントを行なう必要があります。例えば古いブラウザーを使っている場合にはパソコンにカラーマネジメントの能力があってもブラウザーが対応してないので中央の画像が紫色に見える可能性があります。

この記事はもともと2017年2月に書いたものですが、1年ほど経ってかなり状況が変わってきました。2017年12月現在では多くのスマホがカラーマネジメントに対応しています。2017年12月にカラーマネジメントの不可をチェックした状況がこちら。

デバイス写真アプリChromeFirefoxSafari
iPhone 6 (ios 8.1.2)×--×
iPhone 6 (ios 11.2.1)
Android 7××-
Android 8×-

iPhone 7以前でもiosのバージョンが10以降ならカラーマネジメントに対応するようになっています。AndroidではChromeブラウザがアップデートされてブラウザ上ではカラーマネジメントできるようになりました。ただしAndroid 7の場合、Chromeから中央の画像をダウンロードしてデフォルトの写真アプリで見るとまだ紫色になっています。Android 8では写真アプリもちゃんとカラーマネジメントされています。

アップル独自の色空間:Display P3

2015年にアップルがDisplay P3という広色域な色空間をMacに導入し、2016年にiPhone 7にも導入しました。勘違いしている人が多いようなのでここに書きますが、アップルが採用している色空間はアップル独自のDisplay P3でDCI-P3ではありません。Apple Developer API Referenceによると、Display P3色空間はDCI-P3と同じプライマリーを使い、白色点はD65ですが、ガンマはsRGB色空間と同じものを使っています。これはカラープロファイルを直接読むことによっても確認できます。色度図でみるとDCI-P3とDisplay P3は全く同じですが、Display P3のガンマは2.2でDCI-P3のガンマは2.6です。

色度図はこんな感じ。多くのディスプレイはsRGBをターゲットにしているのでそれと比べるとDCI-P3の色域(= Display P3の色域)はかなり広く、より鮮やかな色を表現できると言えます。ただし、DCI-P3の色域が再現できるディスプレイはアップル製品やNECとかEIZOとかのハイエンドモニターに限られていて、たとえiPhone 7のカメラで撮った画像でも普通のモニターやスマホで見ればその恩恵は全く享受できません。

DCI-P3の色度図

iPhone7で撮った写真を使うなら画像圧縮サイトに注意

アップルの色空間は通常のsRGB色空間と違うので、利用するときは注意が必要です。例えば画像をブログに使うとき、画像サイズを小さくするためにTinyPNGなど画像圧縮できるサイトを使ったりする場合。こういった画像圧縮サイトは埋め込まれたカラープロファイルのデータをそのまま捨てています。その結果、アプリケーションが画像の色空間をsRGBと仮定して色処理するので彩度が落ちたような写真になってしまいます。また画像圧縮サイトだけでなく、上に書いたようにブログ読者がスマホから見ている場合も彩度が落ちたように見えます。

一番安全な解決策は、PhotoshopなどでまずプロファイルをsRGBに変換することです。その後ならプロファイルデータを捨てたとしてもそこそこ意図した色で表示されます。

 

まとめ

新しいことにチャレンジするとその恩恵に伴って弊害も出て来ますが、Appleの色空間はまさにそのいい例だと思います。こうやって技術が進歩していくんだなあ。Macでカラープロファイルを変更してみた話も合わせてどうぞ。

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