物件価格の推移と築年数から不動産の将来価値を予測する

自分が購入した物件が、10年後どれくらいの価値があるのか?

不動産を買うときには、投資をやらない人でも売るときのために是非考えておきたい疑問です。日本でもアメリカでも、将来の物件価格を予想するには「物件価格と築年数の関係」「物件価格の推移」を知っておく必要があります。

物件価格と築年数の関係

日本

日本では、物件が古くなるほど価格が下落します。しかも相関はかなり強め。

上は三井住友トラスト不動産のデータをもとに作成した、中古マンションの坪単価と築年数の関係(5年ごとに平均)です。東京、大阪、名古屋ともに築年数が増えるほど価格がさがっています。

築年数1年目の坪単価を100とすると値下がり率がよく分かります。

築20年まではどの都市でも値下がりしていき、築1年と比べると50%前後値下がりします。しかしその後は東京の場合ほとんど値下がりせず、築40年でも50%をキープしています。一方、大阪・名古屋ではその後ゆるやかに値下がりし、築40年で築1年の約30%の値段となります。というわけで日本で中古の不動産投資をするなら東京が良さげ。

アメリカ

アメリカでは物件価格と築年数は関係がない、というのが定説です。古い建物でもリノベーションしていれば価格は上がりますし、築年数よりも物件のコンディションや場所が大事になってきます。また、築年によって物件のエリアがかわってくるので築年数だけの影響をみるのは難しいのが現状です。例えばマンハッタンには新しい建物はほとんど建ちませんから、ニューヨークシティの場合、新しい物件はだいたい郊外にあります。

この定説をサポートするデータが欲しいなと思い探してみましたが、唯一見つかったのがエージェントのJoe Manausaさんが公開しているTallahassee(フロリダ州)のデータのみ。何件のデータに基づいているかも分からないので信憑性もイマイチです。そこで、Redfinを使って自分でデータマイニングしてみました。アメリカ全50州の主要都市うち、Redfinがカバーしている都市の物件データすべてを集めました(けっこう大変だった)。その数およそ11万件。その結果がこちら。

横軸が築年で、縦軸が1ft2あたりの価格となっています。緑の線は築1900年から2015年までのデータを5年ごとに平均(中央値)したもの。この平均値をみると、アメリカでは築年数と物件価格は全く関係ないということがよく分かります。

1900年代前半で価格が上がっていますが、これはおそらく古い建物が残っているエリア=風情がある、地位が確立されているエリアだからだと思われます。

物件価格の推移

日本

日本の場合、物件価格の推移は(長期的なデータがある)公示地価の推移からみることができます。

公示地価の推移:ダイワハウス

全国的にみると、バブルが崩壊した1991年あたりからほぼ30年近く下落が続いています。近年はほぼ横ばいで、東京の場合はすこしずつ地価が上昇してきています。

アメリカ

アメリカの場合、Case-Shiller U.S. National Home Price Indexがアメリカ全体の住宅価格指数として使われています。

1983年から2017年までで、約4倍も価格が上昇しています。一方、日本は全国的にみると1983年から2016年で価値がほぼ変わらず。これはなぜでしょうか。不動産エコノミクスの第10章によると、住宅価格に影響を与えるマクロな要因は以下の4つ:

  • インフレ → インフレ率と同じだけ住宅価格が上昇
  • 人口が1%増加 → 住宅価格が1%増加
  • 1人あたり実質GDPが1%増加 → 住宅価格が1%増加
  • 高齢化が1%増加 → 住宅価格が0.6%減少

アメリカでは毎年インフレしているのでその影響が住宅価格にも反映されていると言えます。

物件の将来の価格を予想するには?

「物件価格と築年数の関係」と「物件価格の推移」を合わせることで将来の物件の価値を予想することができます。

日本の場合、近年の物件価格の推移はほぼ横ばいで、将来的に人口減少、高齢化、そして多少のインフレがあると予測すると、おそらくこの先しばらくも横ばいが続くと思われます。なので築年数だけみれば将来の価値が予測できます。

アメリカの場合、築年数は物件価格と関係ないことが分かりましたから、物件価格の推移だけみればオッケー。アメリカでは今後もゆるやかなインフレとゆるやかな人口増加(先進国では珍しいです)が期待されるので、物件価格はゆるやかに増加していくと思われます。

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